2008(平成20)年8月3日、東京・板橋区熊野町の首都高速5号線でタンクローリーの衝突・炎上事故が発生し、長期間にわたる通行止めなどで首都圏の交通に大きな影響を及ぼしました。国土交通省関東地方整備局の試算では、事故に伴う渋滞による経済損失は1日当たり3.1億円で、事故後5日間の経済損失は首都高速、一般道路、高速道路の合計で約16億円にのぼるとしています。
国土交通省自動車交通局は同年8月8日、事故発生を受けて、危険物運搬車両の事故防止を徹底するよう全日本トラック協会に通達しました。通達では、同種の事故の再発防止を期すため、タンクローリーなど危険物運搬車両の運転者に対する法令遵守、運転時の基本動作の指導など安全運行の徹底について周知徹底を図り、輸送の安全に万全を期すよう指示しました。
国土交通省は2008(平成20)年11月25日、事業用自動車に係る総合的安全対策検討委員会(委員長=野尻俊明流通経済大学法学部教授)を設置し、初会合を開きました。交通事故全体の発生件数、死者数が減少するなかで、事業用自動車の事故件数・死者数の減り方が鈍いため、これまでの取組み手法を検証し、より実効性の高い措置を検討することにしたもので、事業用自動車に係る事故削減目標の設定、運輸安全マネジメント制度の浸透方策、事後チェック機能の強化などが検討課題としてあげられました。
2009(平成21)年3月末を目途にとりまとめを行う予定ですが、同年2月までの検討で、事業用自動車が第1当事者となった事故での死者数を今後10年間で半減し、飲酒運転をゼロとする数値目標を掲げる方向となっています。死者数は、08年の513人を2018(平成30)年に250人とすることを目標とし、中間年の2013(平成25)年に380人とすることをめざします。事故件数削減目標としては、・2018年に3万件(今後10年間で半減)・2018年に4万件(今後10年間で3割減)――との2案が提示されています。
これらの数値目標を達成するための対策としては、運輸安全マネジメントの評価対象を中小規模事業者に拡大することのほか、いわゆる「処分逃れ」対策の強化やドライブレコーダーの普及・活用方策、アルコールチェッカーを使用した点呼の義務づけ、運行記録計の義務づけ範囲拡大、衝突被害軽減ブレーキの装着義務化などが検討されています。
政府は2009(平成21)年1月27日、道路交通法施行令改正案(政令)を閣議決定し、6月1日から施行することを決めました。酒気帯び運転に対する違反点数について、呼気中アルコール濃度が0.25mg/・以上の場合、現行の13点から25点に引き上げ、一発で免許取り消しとするほか、同濃度が0.15mg/・以上0.25mg/・未満の場合も同じく6点から13点に引き上げることにしました。13点は、90日間の免許停止で、事故を伴えば免許取り消しとなります。