国土交通省と公正取引委員会は2008(平成20)年3月4日、軽油価格高騰に対処するためのトラック運送業に対する緊急措置をまとめました。軽油価格の急激な高騰を放置して適切な運賃転嫁が進まない場合、わが国の物流基盤が維持できなくなるおそれがあるとして、燃料サーチャージ制の導入、独占禁止法・下請法の取締り強化、運賃の健全性の確保、関係者による協働のための枠組み――を示しました。国土交通省と公正取引委員会が連名でこうした対策を打ち出すのは初めてで、とくに、燃料価格の上昇・下落に応じたコストの増減分を別建て運賃として設定する燃料サーチャージ制については、荷主とトラック運送事業者に強く導入を働きかけました。サーチャージ制を導入していない場合には、必要に応じて立入検査を実施し、悪質なダンピングには運賃変更命令の発動も辞さない考えを示し、注目されました。
国土交通省では、「買いたたき」や不当競争につながるおそれのある取引を防止するため、貨物自動車運送事業法に基づく事業改善命令の運用拡大を行うとともに、公正取引委員会も運賃改定交渉を巡る「買いたたき」など荷主の不当行為に対する監視を強化するなど、独禁法と下請法を厳正に運用する方針を示しました。
国土交通省は2008(平成20)年3月14日、トラック運送事業が軽油価格高騰問題に対応するための緊急対策として、「トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン」と「トラック運送業における下請・荷主適正取引推進ガイドライン」をまとめ、貨物自動車運送事業法に基づく行政通達として発出しました。
燃料サーチャージ制は、燃料価格の上昇・下落によるコストの増減分を別建て運賃として設定する制度で、航空や海運の運賃では定着していますが、競争の激しいトラックではほとんど導入されていないため、国としての考え方をガイドラインとして示したものです。燃料高騰によるコストアップ分を適正に転嫁することを通じて、中小企業の成長力を底上げすることが狙いです。
具体的な算出方法は、まず基準となる燃料価格を設定し、改定する場合の価格変動幅を例えば5~10円程度で設定して、燃料価格がその幅の中になった時点であらかじめ決めた上乗せ額を適用します。基準価格は、同省によると2003(平成15)年度の1リットル当たり64円から2004(平成16)年度の70円程度に設定している事例が多いようです。サーチャージ制を導入しない場合には、事情聴取により導入できない理由を確認し、ダンピングや不当な競争を前提としている場合には事業改善命令を発することがあるとしています。
もう一方のガイドラインである下請・荷主適正取引推進ガイドラインは、荷主や元請事業者による独禁法・下請法上問題となる行為類型を列挙し、求められる取引慣行と望ましい取引実例を細かく示したもので、違法行為の未然防止を図ることが狙いです。
国土交通省は2008(平成20)年3月21日、日本商工会議所に、同27日には日本経団連に対して、トラック運送取引に燃料サーチャージ制を導入するよう文書で協力要請を行いました。いずれも春田謙国土交通審議官(当時)ら同省幹部が直接出向いて軽油価格高騰で苦しんでいるトラック運送業界の窮状を訴え、サーチャージ制による適正な価格転嫁について理解を求めました。
要請文書は、燃料サーチャージ制導入への協力要請と適正取引の推進に理解を求めるものの2つで、同省が発出した2つのガイドラインの趣旨に理解を求め、傘下の会員各社への周知を要請しました。
要請に対し日本商工会議所側からは、サーチャージと適正取引については荷主の協力を得ることが重要、といった意見が出され、2つのガイドラインを傘下会員に周知することを約束しました。
日本経団連への要請は、同連合会の輸送流通委員会に対して行われ、日本経団連側からは、原材料価格も高騰しているため価格転嫁は経済界全体で考えるべきとの意見のほか、サーチャージ制については、透明性が高く評価できるといった意見が出されました。
国土交通省は2008(平成20)年3月31日、トラック運送事業における社会保険・労働保険未加入対策強化を地方運輸局に通達しました。公正取引委員会との連名で同月4日にまとめた「軽油高騰に対処するための緊急措置」のなかで打ち出していた施策を具体化したものです。社会保険(健康保険、厚生年金)と労働保険(労災保険、雇用保険)について、一部の労働者が未加入の場合は警告を行い、再犯の場合は20日車の車両使用停止処分としています。すべての労働者が未加入の場合は、初犯でも20日車の車両使用停止処分とし、再犯には3倍の60日車の処分を科すこととしており、7月1日から実施されました。このほか、同年4月1日からは、これまでタクシー事業者を対象に行っていた労働基準監督機関との合同監査・監督をトラック事業者にも拡大しました。輸送の安全を確保するため、より効果的な監査を実施することが目的です。
国土交通省は2008年4月1日から、これまで過積載に適用を限定していた荷主勧告制度を過労運転と最高速度違反にも適用しました。荷主勧告に至る前に、荷主に対して協力要請書(一般・警告)を発出するもので、過去3年間に1回、警告的な内容の協力要請書を受け、さらに同種の違反で実運送事業者が行政処分や安全確保命令を受けた場合、荷主に対して勧告が行われる仕組みです。
国土交通省は2008(平成20)年5月28日、トラック運送事業への燃料サーチャージ制導入促進や下請け・荷主取引適正化推進に向けて「トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議」を立ち上げました。燃料高騰分の運賃への転嫁をよりスムーズにしていくため、学識経験者、荷主、元請トラック事業者、下請けトラック事業者らトラック輸送に関する関係者が一堂に会して、相互の信頼感を醸成することが目的です。
委員からは「共通認識を持つことが重要」(日本経団連)、「相互理解が大前提」(日本商工会議所)などといった意見が出され、荷主企業からも「輸送会社の犠牲の上に成り立った経営では健全ではない」「価格は市場が決めるものだが、理屈があるものには応じなければならない」などと理解を示す意見が相次ぎました。
同様のパートナーシップ会議は、6月以降全国のブロック単位や県単位でも設置され、燃料サーチャージ制の導入が促進されました。東京では、関東地区・東京都トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議が7月28日に開かれました。
国土交通省は2008年7月1日から、新規参入事業者に対する法令試験を復活させ、実施しました。1990(平成2)年の規制緩和以降、新規許可申請を行政書士任せにするなど、新規参入事業者の法令遵守意識の欠如が指摘されており、業界内からも参入審査の強化を求める声が強まっていました。このため、許可時の処理方針に「申請者またはその法人の役員は事業の遂行に必要な法令知識を有すること」を追加し、許可申請時に試験を実施することにしました。
試験はペーパーテストで、本省が定めた公示例によると、出題範囲は貨物自動車運送事業法、道路運送法、道路運送車両法、道路交通法、労働基準法、労働安全衛生法などからで、設問は○×方式および語群選択方式としています。出題数は30問で、試験時間は50分。合格基準は出題数の8割以上正解で、基準に達しない場合は再試験を行うとしています。
全日本トラック協会は2008(平成20)年7月3日、軽油の供給状況についての緊急実態調査結果を発表しました。石油販売業者側の供給制限(売り渋り)について実態を把握するために行ったものですが、調査対象となった2,304事業者・協同組合のうち、石油販売業者側から供給制限をするとの連絡を受けた事業者は434社に達し、全体の2割が石油業界から売り渋りを受けている実態が明らかになりました。
このため全ト協は7月7、8の両日、公正取引委員会と資源エネルギー庁に対して、石油元売り各社に安定供給確保を指導するよう文書で要請しました。文書では、元売り各社は、大手を中心に軽油の輸出を増大させており、これにより国内の需給がタイト化し、さらなる急激な値上げが打ち出されるという悪循環が生じていると指摘。さらに需給タイト化のなかで、インタンク販売での売り渋り行為が広がり、輸送需要への対応に支障を生じるおそれがあるとして、安定供給確保に向けて厳正な指導を求めました。
国土交通省は2008年7月29日、燃料サーチャージ制導入の実態調査結果と導入促進のための追加対策をまとめました。調査結果によると、サーチャージ制の導入率が12%にとどまっていることから、追加対策では、大手物流子会社等に対して文書による協力要請を行うとともに、事情聴取・調査を通じて個別の物流子会社に対する働きかけも行っていく方針を打ち出しました。また、元請トラック事業者や特別積合せ事業者に対しても事情聴取・調査により働きかけを行うほか、協会未加入のトラック事業者に対しても文書等で周知、導入を働きかけるとしています。
経済産業省中小企業庁は2008年8月5日、原油・原材料価格高騰に係る下請中小企業向け追加対策をまとめました。・平日の相談時間の延長及び土曜日の相談の実施・原油・原材料価格高騰時における買いたたきの具体的内容の明示・下請代金法に照らし問題がある可能性があると考えられる親事業者に対する特別事情聴取の実施・原油・原材料価格高騰の影響が強い業種を中心とした親事業者に対する特別立入検査の実施――などで、親事業者に対する特別事情聴取、特別立入検査は8月下旬から実施しました。
原油高騰時の「買いたたき」については8月29日、買いたたきの具体的内容を明示した大臣通達文書を約600の親事業者および下請事業者団体に発出し、親事業者および下請事業者双方に周知しました。
ニューヨーク原油先物価格(WTI)は2008(平成20)年7月11日、過去最高の1バレル147.27ドルをつけ、国内の軽油価格も最高値圏に迫るなか、トラック運送業界は8月26日、全国で約2万人が参加して「燃料高騰による経営危機突破全国一斉行動」を挙行しました。
従来の業界の総決起行動は、全国から東京に事業者が集結して決起大会を開催し、与党や関係省庁に陳情活動を行うという形が通例でしたが、今回は各地域ごとで同時多発的に行動を起こすことにより、より地方の声をアピールしやすくするとともに、地方の事業者が行動に参加しやすくしました。
東京では、関東トラック協会(星野良三会長)が自民党本部で総決起大会を開き、約1,500人が参加して燃料サーチャージの導入による適正運賃確保、高速道路料金の引き下げ、燃料税の緊急減税や燃料費の補填などを求める決議を満場一致で採択し、デモ行進も行いました。大会には、来賓として谷垣禎一国土交通相(当時)、二階俊博経済産業相、笹川堯自民党総務会長らも駆けつけました。大会で星野会長は「このままでは実運送事業者が存続できなくなる」などと危機的な状況を訴えました。
政府・与党は2008(平成20)年8月29日、経済対策「安心実現のための緊急総合対策」を決定し、この中に原油高騰対策として、高速道路料金の引き下げと、首都高速・阪神高速の距離別料金導入延期が盛り込まれました。高速道路料金の引き下げでは、物流効率化のため、深夜割引(午前0~4時)を4割引から5割引程度に拡充するほか、夜間割引時間帯を拡大する方針が打ち出されました。引き下げのための予算は2008年度当初予算から約1,000億円を投入し、約1年間実施する予定です。
政府の対策決定を受けて東日本、中日本、西日本、本四連絡の各高速道路会社は9月16日から、平日午後10時~午前0時の夜間時間帯の高速道路料金を一律3割引とする割引サービスを開始しました。10月中旬目途に開始予定だったものを前倒し実施したもので、原油高に苦しむ物流対策としての位置づけです。
夜間割引はこれまで、東名など3路線に限り社会実験として行われてきましたが、これが全国の高速道路に拡大されました。午前0~4時の深夜割引については、10月14日から、割引率が4割引から5割引に引き上げられました。
政府は2008(平成20)年9月29日、2008年度第1次補正予算案を閣議決定し、国会に提出。国会では10月16日に参院本会議で可決され、成立しました。8月29日に政府・与党が決めた経済対策「安心実現のための緊急総合対策」を実現するための財源を措置したもので、トラック運送事業の燃料高騰対策として、中小トラック事業者構造改善実証実験事業に国費35億円、低公害車普及促進対策に国費6億円、荷主等とのパートナーシップによる構造改善実証実験事業に国費1.5億円の計42.5億円が盛り込まれました。トラック協会による協調補助分を加えると、合計64億円の予算規模となります。
このうち、中小トラック事業者構造改善実証実験事業では、保有車両数20台以下の小規模事業者が省エネ機器や低燃費車を導入して省エネ効果をあげたり、省エネ運転に取り組むことなどにより、概ね5%以上の省エネ効果がある場合、燃料費や車両代替費など経費の2分1を上限100万円まで補助する制度です。
政府・与党は2008(平成20)年10月30日、追加経済対策である「生活対策」を決めました。米国発の世界金融危機を受け、実体経済に対する影響を最小限にとどめることが目的で、トラック運送事業関係では、平日昼間の高速道路料金に3割引程度の割引を導入することのほか、貨物運送の中小・小規模企業対策が盛り込まれました。
高速道路料金については、2010(平成22)年度までの2年間、さらに重点的な引き下げを行うことにしたもので、乗用車については、土日祝日の大都市圏を除く高速道路で、1回当たりの通行料金上限を原則1,000円とする対策を盛り込みました。物流効率化の観点からは、平日の割引がなかった昼間の時間帯に3割引程度の割引を新設する方針が示されました。大都市圏(東京、大阪圏)は除かれますが、これにより全ての時間帯に割引が導入される見通しとなりました。
経済産業省は2008年10月31日から1年半の実施予定で、中小企業向けの新たな保証制度である「原材料価格高騰対応等緊急保証」を開始しました。民間金融機関から融資を受ける際、一般保証とは別枠で、無担保保証で8,000万円、普通保証で2億円までの計2億8,000万円まで信用保証協会の100%保証を受けることができ、トラック運送事業も対象となります。業種指定要件を緩和して、中小企業の3分の2をカバーする545業種を対象(その後618業種に拡大)としたもので、計約6兆円の利用を見込んでいます。
2008(平成20)年夏のピークを境に、原油価格は下落を続けましたが、国内の軽油価格は原油の下落ほど下がらず、トラック運送事業者の不満が高まりました。全日本トラック協会の調査によると、原油価格(ドバイ)は、7月11日の1バレル140.15ドルから11月13日には47.6ドルまで66.0%も下落しましたが、国内軽油価格は8月4日の1リットル167.4円から11月13日に127.8円へと23.7%下がったに過ぎません。11月13日の原油価格47ドルは、その3年半前の2005年4月の水準です。全日本トラック協会の中西英一郎会長は、11月18日に開かれた自民党トラック輸送振興議員連盟総会の席上で、「原油は劇的に下落しているが、軽油価格には十分反映されていない」と述べ、原油の下落ペースに対して軽油の下げ足が鈍いことに懸念を表明しました。
政府は2008(平成20)年12月20日、08年度第2次補正予算案を閣議決定し、年明けの2009(平成21)年1月5日、国会に提出しました。追加経済対策「生活対策」を実施するための予算措置で、国会では、2009年1月27日に成立し、財源を措置した関連法案も同年3月4日に衆院で再可決され、成立しました。第2次補正予算には、第1次補正予算で35億円を確保した、中小トラック事業者構造改善実証実験事業に、さらに国費150億円を追加することが盛り込まれており、これにより、トラックの燃料高騰に対する支援策は、国費とトラック協会負担分をあわせて総額200億円を超える予算規模となりました。
第2次補正予算分の構造改善実証実験事業は、補助対象となる事業者規模が保有車両数30台以下に拡充されたほか、2009年度への繰り越しも認められているため、実質的には2009年度予算として執行されることになる見通しです。
第2次補正予算にはこのほか、高速道路料金の平日昼間3割引などを2年間実施するための予算5,000億円が盛り込まれました。
日本高速道路保有・債務返済機構と高速道路会社6社は2009(平成21)年1月16日、追加経済対策などに基づき、高速道路料金引き下げの具体的内容を盛り込んだ「高速道路の有効活用・機能強化に関する計画(案)」をまとめました。
このうち首都高速道路について、物流事業者向けの大口割引(5%)を新たに設けることが明らかになりました。現行の車両単位割引(お得意様割引、最大12%)に上乗せされるものです。
旧日本道路公団系の高速道路料金大口・多頻度割引と同様の割引制度で、協同組合や大手事業者などの契約者単位で5%の割引が上乗せされます。「有効活用・機能強化計画」では、2011(平成23)年度以降、上限料金を抑えつつ対距離料金制度を検討するとされ、その際には、段階的な対距離料金、事業者向け割引(大口多頻度)の拡充を検討するとされています。
機構と6社の意見募集に対して、全日本トラック協会と東京都トラック協会は、首都高速道路の料金割引について、廃止された100回回数券(18.4%割引)並みの割引を求めました。
中小企業の事業承継を円滑化することをめざした中小企業経営承継円滑化法が2008年(平成20)10月1日から施行されました。遺留分に関する民法の特例、事業承継時の金融支援措置、事業承継税制の基本的枠組みなどを盛り込んだ総合的支援策の基礎となる法律で、遺留分に関する民法の特例規定については2009(平成21)年3月1日から施行されました。
非上場株式等に係る課税価格の80%に相当する相続税の納税を猶予するほか、相続に伴う株式の分散を未然防止するため、生前贈与した株式を遺留分減殺請求の対象から除外する民法の特例を適用します。さらに、経営者の死亡等に伴い必要となる資金の調達も支援します。
宅配便などで商品の代金を荷主に代わって受領する「代金引換サービス」を巡り、金融庁が金融機関と同様の規制を検討し始めたことに対し、全日本トラック協会と東京路線トラック協会(旧東京路線トラック協議会)が強く反発し、代引きへの規制は見送られることになりました。
全日本トラック協会は2008(平成20)年12月9日、金融庁に対し、代金引換サービスに対する金融規制に断固反対することなどを内容とする要望書を提出しました。要望書では、「代引きサービスは品代金の代理受領であり、運送行為と不可分の関係にある。金融機関が行う為替取引とは全く異なる」として、消費者の利便性も損なわれることから、日本経済全体に悪影響を及ぼすと指摘しました。
代引き規制を検討していた、金融審議会金融分科会第二部会は2009(平成21)年1月14日、運送事業者が行う代金引換サービス(代引きサービス)に対する金融規制を見送ることなどを盛り込んだ最終報告書をまとめました。ただ、代引きサービスなどが銀行法に抵触する疑義がないことを意味するものではない、とし、引き続き注視していくべきだとしています。
全日本トラック協会は2008(平成20)年12月16日、厚生労働省に対し、労働者派遣法改正案で日雇い派遣が原則禁止される見通しとなっていることに対し、引越業務を適用除外とすることなどを求めた要望書を提出しました。とくに、3月中旬~4月上旬の繁忙期に年間業務量の3分の1が集中する引越輸送では、作業要員の多くを日雇い派遣に頼っており、作業員の確保ができなければ消費者に迷惑をかけ、社会に多大な混乱を招くことから、要望書では、引越業務を日雇い派遣禁止対象外とするか、引越繁忙期には一定期間(1か月以上)派遣禁止対象外期間を設定するよう求めました。
このほか、2008年12月5日に参院本会議で改正労働基準法が可決、成立し、2010(平成22)年4月1日から時間外労働の賃金割増率が引き上げられることになりました。1か月60時間を超える時間外労働については、その超えた時間の割増賃金率を50%以上とすることが義務づけられます。ただし、中小企業に対しては猶予措置が講じられます。
厚生労働省は2008(平成20)年2月10日、「雇用調整助成金支給要領および中小企業緊急雇用安定助成金支給要領の一部改正等に関する留意事項について」とする通達改正を行い、全国の各労働局に通知しました。
雇用調整助成金と中小企業緊急雇用安定助成金は、急激な景気の低迷で労働者を休業させた場合、休業手当の5分の4(大企業は3分の2)を助成する制度ですが、製造業を念頭に置いた制度のため、一部の労働者を休業させる一方で、残った労働者に残業をさせると残業時間と休業時間が相殺され、助成対象とならないのが通例でした。
このため、トラック運転者など通常の勤務形態が長時間の時間外勤務を前提としている運輸業で休業した場合には、・自動車運転者の労働時間等改善基準告示を遵守していること・労使協定(36協定)を締結していること――を条件に、恒常的に時間外労働を行っている労働者として認め、休業時間と残業時間を相殺しないことにしました。
景気の悪化に伴い、これらの助成金の利用が急増していますが、この通達改正により、残業が多いトラック運送事業にも休業への助成が認められることになりました。