飲酒運転の厳罰化を主な内容とする改正刑法と改正道交法が2007(平成19)年の通常国会で成立し、改正刑法は6月12日、改正道交法は9月19日から施行されました。改正道交法では、飲酒運転に対する罰則が強化され、改正刑法では自動車運転過失致死傷罪が創設されました。両法の罰則強化が相まって厳罰化を図るもので、道交法と刑法の併合罪では、酒酔い運転で死傷事故を起こした場合には現行の懲役7年6か月以下から同10年6か月以下に、酒気帯びで死傷事故の場合は同6年以下から同10年以下へと引き上げられます。また、飲酒運転でひき逃げ事故を起こした場合には、15年以下の懲役又は300万円以下の罰金へと大幅に厳罰化されました。
改正道交法では、酒酔い運転が5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に、酒気帯び運転が3年以下の懲役又は50万円以下の罰金へとほぼ2倍に引き上げられました。飲酒運転の周辺者に対する制裁も強化され、車両の提供、酒類の提供、要求・依頼しての同乗行為を禁止し、厳罰化しました。
改正刑法による自動車運転過失致死傷罪は、故意犯である危険運転致死傷罪(懲役20年以下)と、過失犯である業務上過失致死傷罪(同5年以下)との刑の差を埋めるために創設されたもので、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役もしくは禁固または100万円以下の罰金に処する」と規定されました。
政府は2007(平成19)年12月26日、常習飲酒運転者対策推進会議を開き、「常習飲酒運転者対策の推進について」を決定しました。常習飲酒者やアルコール依存症対策を中心とした対策をまとめたもので、自動車運送事業者等についても、各業界団体が作成する飲酒運転防止対策マニュアルの適時適切な見直しと実施の徹底を要請するとともに、運行管理者講習実施機関に対し、アルコール依存症専門家の知見等を踏まえた講習の見直しなど一層の充実を図るよう要請するとしています。
また、運転者全員にアルコール検知器で検知を行っている運送事業者の現状(バス87%、タクシー64%、トラック53%)を踏まえ、事業者へのアルコール検知器の普及と適正な活用をさらに要請するとしています。
政府の「常習飲酒運転者対策」では、運転者が酒気を帯びているとエンジンをかけられなくする、アルコール・インターロック装置の活用方策についての検討が盛り込まれました。国土交通省が警察庁、法務省、経済産業省などの協力を得てとりまとめた技術指針案を踏まえ、内閣府が2008(平成20)年度から装置の活用方策について多角的に検討する総合的な常習飲酒運転者対策の調査を実施することになりました。
国土交通省がまとめた技術指針案では、呼気吹き込み式のアルコール・インターロック装置について、任意装着を前提とした要件を示し、常習者対策として活用する場合の追加的要件を特定しました。欧米で実用化されている呼気吹き込み式装置には、毎回強い呼気を吹き込む手間がかかったり、マウスピースを交換する必要があるなどの点でユーザー受容性の課題があるほか、なりすまし防止が困難という課題もあります。
このため国交省の最終報告では、事業用ドライバー対策として、運行管理者がインターロックをかけられるようにするため、顔画像とアルコール検知器を遠隔モニターする運行管理システムと、遠隔操作でエンジンをロックできる装置を併せて使用するアイディアなどを提示しています。
国土交通省は2007(平成19)年5月28日、トラック運送事業における「安全運行パートナーシップ・ガイドライン」をまとめました。荷主・元請け事業者と実運送事業者が協働して取り組む具体的な安全対策と、その協働体制の確立に関するガイドラインを作成したもので、荷主や元請けに対し、実運送事業者が安全な運行を確保できないような運行依頼は行わないよう求め、そのような場合は到着時間を見直すなど、関係者が協力して安全運行を確保することなどを求めています。
ガイドラインでは、急な貨物量の増加があった場合には、過積載とならないよう車両を手配し、出発時間の遅延が見込まれる場合には、到着時間を変更したり、運行ルートを変更するよう求めています。到着時間に遅延が見込まれる場合には、到着時間の再設定やルート変更などを行うこととし、遅延に対するペナルティは一律に付与するのではなく、遅れた理由などを分析して柔軟に対応するよう求めています。
これら改善措置では、荷主・元請けと実運送の双方が安全運行パートナーシップ・ルールとしてルール化し、形骸化させないための継続的な取り組みを行うよう求めています。
国土交通省は2007(平成19)年7月1日から、運行管理者資格者証の返納命令発令基準を強化しました。運転者の過労運転や飲酒運転など、悪質違反を容認していた場合には、直ちに返納命令を発令するよう強化したもので、安全規制強化の一環です。
返納命令は従来、処分日車数が「80日車」以上で、かつ個別要件を満たす場合に発令されていましたが、▽運転者が過労、飲酒、薬物等使用、無免許、大型等無資格運転、過積載、最高速度違反を犯し、これを資格者が容認していた場合▽資格者が事業用自動車で飲酒、薬物等使用、無免許、無資格運転、ひき逃げを行った場合▽運転者に対する点呼を代務者任せでまったく実施していない場合――などには、直ちに返納命令を発令できるように改正。
「まったく実施していない」とは、「病気等による特段の理由がないにもかかわらず、1か月間点呼簿上点呼が実施されていないことが確認できた場合」などと定められています。