改正自動車NOx・PM法が2008(平成20)年1月1日に施行されました。大都市圏の大気汚染は、自動車NOx・PM法に基づくトラック運送事業者らの新車への代替努力もあって改善傾向にありますが、なお環境基準を達成していない局地的な汚染を改善するために法改正が行われ、対策地域外からの流入車対策が新たに追加されたものです。
国土交通、環境両省では、基準適合車である流入車の判別をしやすくするため、施行に併せてステッカー制度を導入しました。同年1月25日に閣議決定された総量削減基本方針では、対策地域外からの流入車を使用する事業者に対し、基準適合車を優先的に配車するよう求め、適合車にはステッカーを利用して分かりやすく表示するよう求めています。
改正法に基づく流入車対策では、現行対策地域の周辺地域から、指定された局地(交差点)にディーゼル車を一定頻度以上乗り入れる保有台数30台以上の事業者に、新たに排出抑制計画の提出が義務づけられ、流入車両に基準適合車の使用を求められることになります。
今後、各都道府県知事が具体的な局地の指定申請を環境省に行い、環境省が交通量を調査したうえで、流入車対策を適用する周辺地域を指定します。周辺地域としては、現行対策地域に隣接する最大13府県が指定される可能性があります。規制対象となる車両の局地への運行頻度は、年間300回以上とされており、事業者の運行回数を1年間かけて算定するため、実質的な対策の開始は、早くても09(平成21)年春頃になると見込まれています。
基準適合車へのステッカー貼付も義務づけではなく、任意となっていることなどから、東京都をはじめとする首都圏の8都県市は「実効性の面で不十分と言わざるを得ない」として、さらなる法改正も求めています。
大阪府は2009(平成21)年1月1日から、生活環境の保全等に関する府条例に基づくディーゼルトラック・バスの流入車規制を開始します。大阪市等37市町を規制地域とし、規制地域を発着地とする運行に対して、国の自動車NOx・PM法排出基準適合車の使用を義務づけるものです。府内で30台以上を保有する貨物・旅客自動車運送事業者および資本金3億円超の第1種貨物利用運送事業者、資本金3億円超(府内の建物延べ面積が1万㎡超または敷地面積3万㎡超の事業所を有するもの)で、継続的に物品を運送させる荷主には、毎年度の知事への報告を義務づけ、港湾・空港・貨物駅・自動車ターミナル・卸売市場などの施設管理者にも適合車の使用を周知するよう求めています。
非適合車両に対しては適合車使用命令をかけ、命令違反に対しては50万円以下の罰金を科します。適合車ステッカーを貼付していない車両に対しても表示命令を出し、命令違反には30万円以下の罰金を科します。荷主に対しても、運送事業者に適合車の使用を求めていない場合には勧告を行い、確認・記録をしていないものには改善命令を発し、命令違反の場合は20万円以下の罰金を科すことにしています。
条例のうち、ステッカー関係部分は08(平成20)年4月から施行され、6月頃からステッカーの交付を開始する予定です。
国土交通省は2007(平成19)年10月15日、09(平成21)年に実施するディーゼル車のポスト新長期規制の規制値など、細目を定めた告示案をまとめました。新車のNOx規制値を現行より40~65%低減、PM規制値を同じく53~64%低減するほか、規制の適用開始時期を新型車については09年10月1日からと正式に定めました。
自動車NOx・PM法の目標である「2010(平成22)年度までに環境基準概ね達成」を確実なものとするための規制強化で、使用過程時のPM規制値も強化するとともに、新車時のディーゼル黒煙規制を廃止することにしています。
継続生産車と輸入車に対する規制適用開始は、10年9月1日とされており、中量車(車両総重量1.7トン超3.5トン未満)のうち同2.5トン以下のもの、重量車(同3.5トン超)うち同12トン以下のものについては、新型車が10年10月1日から、継続生産車・輸入車が11 (平成23)年9月1日からの適用となります。 このほか、新車のPM規制値強化に伴い、より精度の高い新たな測定方法に見直すことにしています。
環境省が2007(平成19)年11月5日に発表した2006(平成18)年度の温室効果ガス排出量速報値によると、運輸部門のCO2排出量は前年度比0.9%減の2億5,400万トンと、5年連続で減少し、目標達成まであと400万トンに迫りました。06年度の減少は、これまで増加の一途をたどっていたマイカーからの排出量が減少したためですが、京都議定書の基準年(1990年)との比較では17.0%増えています。営業用と自家用合わせたトラックからの排出量は、前年度比0.1%減の9,060万トンと微減にとどまりましたが、90年と比べると4.2%減少しており、営自転換が運輸部門のCO2排出量の減少に寄与しています。
我が国全体の06年度の温室効果ガス排出量は、運輸部門のほか、業務その他部門、家庭部門などからの排出量も減少したため、CO2換算で前年度比1.3%減の13億4,100万トンとなりましたが、1990年との比較では6.4%増加しており、「90年比6%削減」という京都議定書の目標達成のためには、森林吸収分などを除いてもなお7%の排出削減が必要な情勢です。
06年度のトラックからの排出量を営自別に見ると、営業用トラックは前年度比1.5%増の4,510万トン、自家用が同1.6%減の4,550万トンです。1990年度との比較で見ると、営業用トラックの排出量は32%増加していますが、自家用トラックは25%減少しており、自家用から営業用への転換が進んでいることが見て取れます。
社会資本整備審議会環境部会・交通政策審議会交通体系分科会環境部会の合同会議が2007(平成19)年9月13日開かれ、運輸業界の各団体が定めている環境自主行動計画のフォローアップが行われました。全28団体のうち、全日本トラック協会は、CO2排出原単位で当初の目標値である10%削減をすでに達成しているため、目標値を従来より約20%引き上げて、2008~2012年度の平均値を1996年度比30%削減する目標へと変更しました。今後の輸送トンキロの伸びとエコドライブ、低公害車普及、輸送の効率化などの対策効果を推計し、上方修正したものです。
目標を上積みしたのは全日本トラック協会をはじめとする6団体で、合同会議のフォローアップ結果は「これらの団体がより高い目標を掲げ、積極的な取り組みを行ったことは高く評価できる」としています。
なお、08(平成20)年2月14日に開かれた合同会議では、2006年度の削減実績が報告され、このうち全日本トラック協会の2006年度排出原単位(トンキロ当たりのCO2排出量)は1996年度比で26.4%削減しており、目標達成が可能と判断される団体に分類されています。
経済産業、国土交通両省は2007(平成19)年6月25日、省エネ法で新たに規制対象となる特定荷主(年間貨物輸送委託量3,000万トンキロ以上、2007年6月現在804社)と、輸送事業者間のエネルギー使用量データ交換に関するガイドラインを策定しました。不特定多数の荷主が不特定多数の輸送事業者に個別の形式でデータ提供を依頼すると、輸送事業者側が対応困難となる恐れがあるため、輸送事業者から荷主へのデータ提供方法の参考として、データ交換フォームを示したものです。
ガイドラインでは、このデータ交換フォームの活用に当たり、荷主が輸送事業者を管理するための手段として用いることや、荷主としての責任を輸送事業者に転嫁するための手段として用いることは、厳に慎むようクギを刺しています。
データ交換フォームは、燃料法、燃費法、トンキロ法というエネルギー消費量算定方法ごとに3種類あり、燃料法では、ガソリン車、ディーゼル車(軽油)別に車種区分ごとの燃料使用量を記載し、燃費法では最大積載量区分ごとの平均燃費を記載します。トンキロ法では、最大積載量区分ごとの輸送量(トンキロ)と積載率を記載します。
国土交通省では、特定荷主804社を対象に、物流効率化方策の紹介などの支援を行う考えで、荷主の実情を把握し、グリーン物流パートナーシップ事業の枠組みも含めてツールを紹介するほか、産業カテゴリー別の研修会開催など、きめ細かい支援策を検討しています。