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環境改善のために

運輸部門のCO2排出量4年連続減少

 2005(平成17)年度のわが国温室効果ガス排出量(速報値)は、13億6,400万トンとなり、前年度に比べ0.6%増加し、京都議定書に定める基準年(1990年)と比較して8.1%上回っています。議定書でのわが国の削減目標は90年比6%削減であり、合計14.1%の削減をしなければならないことになりますが、森林吸収で3.8%、京都メカニズムで1.6%分の削減を確保するため、差し引き8.7%の削減が必要となります。前年度と比べると、エネルギー起源の二酸化炭素(CO2)排出量が、運輸部門で減少する一方、厳冬などにより家庭部門、業務その他部門の排出量は大きく伸びています。
 温室効果ガスの95%を占めるCO2排出量は、前年度比0.8%増の12億9,700万トンとなり、基準年と比べると13.3%も上回っています。部門別にみると、工場などの産業部門は前年度比0.2%増の4億6,600万トン、自動車など運輸部門が1.8%減の2億5,700万トン、事務所など業務その他部門が3.1%増の2億3,400万トン、家庭部門が4.5%増の1億7,500万トンとなっています。 業務その他部門と家庭部門の増加は、厳冬などによる暖房需要の増加で電力消費が増えたことが主な要因で、2002年度からの原子力発電停止も影響しています。

トラックCO排出量、自営転換で減少

 運輸部門のCO2排出量は、2001年をピークに4年連続で減少しています。基準年(1990年)に比べると18.1%増と大きく伸びていますが、政府の運輸部門排出量目標値は2億5,000万トンであり、目標達成まであと700万トンに迫るなど順調に減少しているといえます。
 運輸部門をさらに細かくみてみると、貨物分野の前年度比は、トラックが営業用1.1%減、自家用1.9%減の合計1.5%減と減少しており、鉄道が1.9%増、船舶が4.1%減、航空が1.1%増と鉄道と航空が増加、貨物分野合計では1.7%減少しています。旅客分野は、増加傾向にあった自家用乗用車(マイカー)が3.0%減と減少し、旅客合計も2.0%減となりました。 ただ、基準年との比較で見ると、トラックからの排出量減少などにより貨物分野の排出量が4.8%減少しているのに対し、自家用乗用車(マイカー)からの排出量大幅増により旅客分野が39.7%増加しています。
 トラックからの排出量は、自家用トラックが基準年比で23.1%減少しているのに対し、営業用トラックは28.6%増加しており、自家用から営業用への転換、いわゆる自営転換が進んでいることを示しています。結果として、トラックの自営合計の排出量は、基準年に比べて4.4%減少しており、自営転換によりトラックからのCO2排出量が減少していることがわかります。

改正省エネ法でトラック事業者淘汰も

 工場などに省エネ計画の策定を義務づけていた省エネ法が改正され、2006年4月から貨物・旅客輸送事業者と荷主が新たに規制対象に加えられました。規制対象となるのは、保有台数200台以上のトラック運送事業者、年間貨物輸送量3,000万トンキロ以上の荷主企業など比較的規模の大きな事業者ですが、荷主が規制対象になると、その物流を受託する運送事業者も規模の大小にかかわらず荷主からエネルギー使用量の報告を求められるとともに、省エネ輸送への協力を求められることになります。
 荷主企業は約2,000社が規制対象になると見られており、国内物流の約7割をカバーすると見込まれています。取り組むべき具体的な対策として、国土交通省の告示では低燃費車の導入、エコドライブの推進、貨物積載効率の向上などが示されており、荷主の方策としては経済産業省の告示でモーダルシフト、3PLの活用、自営転換などがあげられています。
規制対象となる荷主と貨物輸送事業者は、省エネ計画の策定と毎年度のエネルギー使用量の報告が義務づけられます。改正省エネ法の施行は、輸送の効率化や省エネ化に対応できない輸送事業者が淘汰される恐れがある一方、省エネ対策を荷主に提案することで新たなビジネスチャンスが生まれる可能性もあると指摘されています。

全ト協は数値目標設定

 全日本トラック協会では、2000年度に環境基本行動計画を策定し、アイドリングストップなど自主的な環境対策への取り組みを進めてきましたが、その後の社会・経済情勢の変化や環境対策の進捗状況をふまえ、今後5年間の環境対策の数値目標と対策内容を盛り込んだ環境対策中期計画を2006年12月にまとめました。
 2010年度を目標達成年次とした計画で、地球環境対策については営業用トラックの輸送トンキロあたりCO2排出原単位を2004年度比で7.0% 13.3%削減する目標を掲げたほか、自営転換により、全トラック輸送に占める営業用トラックの輸送比率(トンキロベース)を2004年度の86%から87 88%に引き上げることをめざしています。
目標達成に向けた具体的な対策としては、エコドライブの普及促進と環境意識の向上を柱に据え、エコドライブ講習会の開催やエコドライブ推進マニュアルの配布、デジタルタコグラフ等のEMS(エコドライブマネジメントシステム)関連機器に対する助成などを盛り込んでいます。
 中期計画では、大気汚染などの地域環境対策についても目標と具体的対策を定めており、自動車NOx・PM法対策地域内の非適合車15万台(2006年3月末現在)を2010年度にはすべて規制適合車に代替し、このうち14万台をディーゼル規制適合車に、9,000台をCNG車に、5,000台をハイブリッド車に代替する計画です。そのための対策としては、低公害車の導入促進を基本的な柱と位置づけ、購入費用の一部助成などを対策として盛り込んでいます。

流入車対策が焦点に

 中央環境審議会大気環境部会(部会長=坂本和彦埼玉大学大学院教授)は2007(平成19)年1月19日、自動車NOx・PM法の見直しについての最終報告案を了承しました。審議の焦点となっていた流入車対策については、トラック運送事業者と荷主に対し排出量抑制のために「必要な取り組みを行うべきだ」と指摘しましたが、具体案は明示せず、国土交通省など関係省庁との調整に委ねられた格好となっています。
 同審議会では、環境部会に設置された自動車排出ガス総合対策小委員会(委員長=大聖泰弘早稲田大学教授)で2年間かけて検討が続けられてきました。最終報告案によると、同法の目標年次である2010年には、対策地域全体としてはおおむね環境基準を達成できる見込みとされていますが、交通量が極めて多い道路が重層的に交差する交差点など、いわゆる局地においては、NO2(二酸化窒素)環境基準が非達成となる地点が10か所強程度残ると見込まれており、何らかの対策強化が求められています。
 局地対策は、交通流の円滑化や道路構造対策、沿道対策などが中心となりますが、最終報告案では、対策地域外からの流入車についても、一定の対策を講じるべきだと指摘しています。
 環境省では、局地対策と流入車対策強化を内容とする自動車NOx・PM法改正案を今通常国会に提出したい考えですが、トラック運送事業者をはじめとするディーゼル車ユーザーにこれ以上過度な負担を求めるべきではないとする意見もあり、関係省庁間で調整が続けられています。

排出ガス規制さらに強化

 中央環境審議会は2005年4月、ディーゼル車の排出ガス規制のさらなる強化を盛り込んだ答申をまとめました。PMは測定限界以下のほぼゼロとし、NOxも含めてガソリン車並みに低減するもので、2009年から実施されます。規制が実現すれば「大気汚染の元凶」とされてきたディーゼル車のイメージは大きく変わることになります。
 2009年規制は、いわゆる「ポスト新長期規制」と呼ばれるもので、2010年の自動車NOx・PM法目標達成をより確かなものとする狙いがあります。車両総重量3.5トン超の重量車の規制値は、PMで0.01g/kwhとし、2005年10月から始まった長期規制(0.027g/kwh)と比較して63%の削減となります。
 欧州のEURO4、米国の2007年規制をも上回る世界で最も厳しい規制で、NOxについてはさらにこの3分の1程度とする「挑戦目標」も別途定めました。米国が2010年の規制でさらに厳しい規制を予定していることを意識したもので、あくまでも世界最高水準の規制を追求する姿勢を示したものといえます。
 ただ、排出ガスの削減とトレードオフの関係にある燃費については悪化することが懸念されており、車両価格の抑制とあわせて自動車メーカーの課題となっています。

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