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経営環境

新物流大綱を閣議決定

 政府は2005年11月15日、2005年から2009年までを計画年次とする新しい総合物流施策大綱を閣議決定しました。経済社会の変化や構造改革の進展などを踏まえ、(1)スピーディーでシームレスかつ低廉な国際・国内一体となった物流の実現(2)「グリーン物流」など効率的で環境にやさしい物流の実現(3)ディマンドサイドを重視した効率的物流システムの実現(4)国民生活の安全・安心を支える物流システムの実現──の4項目を目標に据えています。とくに中国をはじめとする東アジア地域との間の国際物流を効率化する視点が濃厚に打ち出され、今後政府をあげてアジア圏物流のさらなるスピードアップと低廉化に向けた施策が展開されていくことになります。
 中国は、今やわが国最大の貿易相手国です。中国を中心とするアジア地域は、世界の生産拠点、消費市場として急速な発展を遂げており、わが国からも多くの企業が進出し、経済交流は今後もますます拡大していくと見込まれています。調達、製造、販売の面で国際、国内の区別なくわが国を含めたアジア市場を一体的に捉え、無駄な在庫を持たないSCM(サプライチェーン・マネジメント)の徹底がグローバル規模で進められています。新物流大綱では、アジア域内物流が準国内物流化するなかで、国際拠点港湾・空港の機能向上、国際・国内の輸送モード連携による円滑な物流ネットワークの構築などを進めていくとしています。
 4項目の目標のうち、環境に優しい物流では、物流活動によるCO2排出削減に向け、荷主と物流事業者のパートナーシップによる自家用トラックから営業用トラックへの転換、モーダルシフトの促進、輸配送の共同化、サード・パーティ・ロジスティクス(3PL)の効果的活用などを推進するとしています。

物流総合効率化法が施行

 物流拠点(倉庫)を中核として輸送、保管、荷捌き、流通加工を一体的に行うことにより物流の総合化を図り、輸送網の集約や配送の共同化で物流を効率化する事業を支援する物流総合効率化法(流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律)が2005年10月1日に施行されました。高速道路や港湾などの社会資本の近くに立地する物流拠点を整備し、物流を総合化、効率化することにより環境への負荷を低減する事業の計画を認定し、各種事業許可の一括取得や市街化調整区域の開発許可への配慮、中小企業への支援などの特例措置を適用する制度で、2006年2月8日現在で17件の総合効率化計画が認定されています。
 当初は大手物流企業の計画策定が見込まれていましたが、認定された17件の計画のうち、9件は中小企業単独あるいは中小企業の連携によるものとして注目されています。また、同日現在で申請中の計画が3件あり、このうち2件は市街化調整区域内に立地する計画となっています。

道路財源の一般財源化に反対

 税収を道路整備に充てることになっている道路特定財源を、財政再建の観点から使途を道路に限定しない一般財源にしようという動きが2006年度税制改正論議のなかで浮上し、納税者である自動車ユーザーや運送業界、ユーザーを顧客とする自動車業界などが「約束違反だ」などとして一斉に反発しました。東京都トラック協会も2005年10月6日に自民党東京都連に対して提出した2006年度税制改正要望のなかで、特別要望事項として(1)本則税率よりも高い暫定税率の廃止(2)一般財源化には断固反対──を強く主張しました。
 全日本トラック協会を含む自動車の製造、販売、ユーザーの関連19団体は2005年12月2日、「道路特定財源の一般財源化反対 緊急総決起大会」を都内で開催し、「道路整備に充当されないなら暫定税率の引き下げや廃止などによりユーザーに還元すべき」などとする決議を満場一致で採択しました。19団体が集めた署名は、目標の100万人を大きく上回る240万人分に達し、署名は自民党本部、財務、経済産業、国土交通の各省に届けられました。
 道路特定財源の一般財源化は小泉純一郎首相が指示したもので、これに対し政府・与党は2005年12月9日、道路整備に対するニーズを踏まえ、その必要性を具体的に見極めつつ、真に必要な道路は計画的に整備を進める。その際、道路歳出は財源に関わらず厳格な事業評価や徹底したコスト縮減を行い、引き続き、重点化、効率化を図る(2)厳しい財政事情の下、環境面への影響にも配慮し、暫定税率による上乗せ分を含め、現行の税率水準を維持する特定財源制度については、一般財源化を図ることを前提とし、来年の歳出・歳入一体改革の議論のなかで、納税者に対して十分な説明を行い、その理解を得つつ、具体案を得るとする基本方針をまとめました。税率の維持と一般財源化の方針を盛り込みながら、納税者の理解も得るといういわば玉虫色の決着で、具体案は2006年6月の「経済財政運営と構造改革に関する基本方針06」(骨太の方針06)に先送りされた格好ですが、自動車関連団体で構成する自動車税制改革フォーラムは、道路特定財源は、道路整備のために「受益と負担」の観点から自動車ユーザーに課している税。しかも、道路整備の緊急性に鑑み、本則税率の約2倍の暫定税率を課している。
 したがって全額を道路整備に充当すべきだが、どうしても財源が余るのであれば、暫定税率を廃止して納税者に還元すべき240万人以上の自動車ユーザーから「一般財源化反対」との署名が集まっており、こうした納税者の声を無視することは許されない(4)納税者の納得を得ないままに暫定税率の維持を先行して決めるのは乱暴な話であり到底承服できない納税者である自動車ユーザーの納得を得られるよう、暫定税率のあり方を含めた検討が再度行われるよう、強く要望するとする見解を発表し、徹底抗戦する構えです。

環境税は再度見送り

 ガソリンや軽油などの化石燃料に課税する環境税の導入は、トラック運送業界をはじめ経済界の根強い反対もあって、2005年12月15日にまとめられた与党の2006年度税制改正大綱で「2008年から京都議定書の第1約束期間が始まることを踏まえ、さまざまな政策的手法全体の中での位置づけ、課税の効果、国民経済や産業の国際競争力に与える影響、既存の税制との関係等に考慮を払いながら納税者の理解と協力を得つつ、総合的に検討する」とされ、2年連続での導入見送りが決まりました。
 環境省案は、税率を炭素1トン当たり2,400円(前年の案は3,000円)とし、ガソリン1リットル当たりの換算で約1.5円(同約1.9円)の負担を求めるもので、今回は原油価格の高騰にも配慮してガソリン、軽油については当分の間適用しないことにするなど一定の配慮を見せていましたが、自民党税制調査会での議論では「環境税率の10倍もガソリン価格が上昇しているのに、消費量は減っていない」とそのエネルギー消費抑制効果を疑問視する声が強く、導入を認めるには至りませんでした。
 ただ、環境税の議論と並行して行われた道路特定財源の一般財源化の議論で、道路財源を環境対策に振り向ける案も浮上しました。このため、2006年6月に予定されている骨太の方針06で、道路特定財源の一般財源化に関連して環境税も議論される可能性があり、議論の行方が注目されています。

首都高の割引が決着

 国土交通省は2005年9月16日、首都高速道路公団と阪神高速道路公団が申請した新たなETC割引の導入を認可し、両公団は10月1日の民営化と同時に実施しました。回数券の廃止に伴う措置で、利用頻度割引の創設や曜日・時間帯別割引を新たに導入することなどが内容です。
 首都高速の曜日・時間帯別割引は、日曜・祝日が全日20%、平日のオフピーク時間帯(午前11時~午後3時、午後6時~同10時)が10%、平日夜間(午後10時~午前6時)が20%割引となります。当初案では、これら以外の時間帯には割引が適用されない内容となっていましたが、東京都トラック協会などの要望を受け、2006年3月末までという期間限定で一律3%割引がキャンペーンとして実施されました。
 一方、利用頻度割引は、一般向けと大口向けの二種類が設けられ、大口向けのETCコーポレートカード利用の場合は、カードごとの月間利用額のうち一定額を上回る部分について最大12%を割り引く制度とされました。割引率は利用額に応じて段階的に設定され、当初案にはなかった月1万円以下の利用に対しても2%の割引が適用されることになりました。
 ただ、廃止された高額回数券割引(18.4%)に比べると、新しいETC割引は著しく割引率が低く、トラック運送事業者にとって実質的な料金値上げになっていることから、東京都トラック協会は2006年2月1日、東京都トラック運送事業協同組合連合会と連名で、期間限定3%OFFキャンペーンの継続拡充と通行料金の引き下げを首都高速道路(14)に対し再度要望しました。要望では、2006年3月末までとされている3%OFFキャンペーンを継続し、割引率を5%に引き上げるよう求めたほか、平日オフピークの割引率を15%程度に引き上げ、土曜日についても日曜・祝日割引と同様の全日20%割引とするよう要望しています。

対距離料金制には不満も

 首都高速道路と阪神高速道路(株)は2008年度から、現在料金圏ごとに均一料金となっている通行料金を利用距離に応じた料金体系へと移行する方針です。両高速道路会社では短距離利用を現行より安く、長距離利用を割高にする考えですが、長距離利用は現行より値上げとなるため、利用者の多くは難色を示しています。
 料金体系を利用距離に応じたものへと変えるのは、道路ネットワークの広域化により、利用者によって利用距離の差が大きくなり、均一の料金では不公平感も大きくなっているためです。また、対距離制はETCにより可能になるため、事実上ETCの義務づけといえるものです。
 首都高速道路(株)が示したイメージによると、現行料金より安くなるのは、例えば東京線・乗用車の東名高速~霞ヶ関が700円から600円程度に、中央道~初台が同じく400円程度へとそれぞれ安くなりますが、新宿~空港中央(羽田)が700円から900円程度に、新宿~京葉道も900円程度へと値上げとなり、東名高速~東関道のように首都高を横断する長距離利用の場合は1,350円程度へと約2倍になるとしています。
 首都高速道路(株)では、短距離利用の値下げで交通量が増加し、結果的に増収になると見込んでいますが、国民から寄せられた意見では、この料金イメージを「妥当」としたものは7%にとどまり、「料金が高くなる」「上限料金を現行料金程度にすべき」などと見直しを求める意見が首都高速で6割近くにのぼり、阪神高速では8割を占めました。とくに、大幅な値上げとなる長距離利用については、首都高速で57%、阪神高速で45%の国民が「負担軽減措置が必要」と主張しています。
 首都高速道路(株)では、長距離料金の激変緩和措置を検討していく考えですが、トラック運送業界にとっても今後の新たな課題となりそうです。

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