2004(平成16)年度も引き続き、環境対策が重要事項であるとして東京都トラック協会は、東京都環境確保条例や自動車NOx・PM法に対応。PM(粒子状物質)減少装置装着補助や低公害車導入支援、さらには2005(平成17)年10月からの新長期規制を見据えての要望活動を活発に展開してきました。
また、04年11月に発覚した三井物産製DPFデータ改ざん問題に関して、同社製DPFを装着した会員事業者が不利益にならないよう、東京都や東京都議会に要望するとともに、東ト協環境部に「対策室」を設置し、会員事業者からの相談などに応じています。
東京都トラック協会は2004(平成16)年度も環境対策窓口で、国や東京都等のPM減少装置装着補助事業に対応してきました。国土交通省は、2003(平成15)年度PM減少装置装着補助が受付開始からわずか2か月余で予算額に達したことから、04年度では補助申請を複数回に分けて受け付けることとし、第1回を04年4月20日から開始しました。
東ト協では3月下旬「環境対応支援策説明会」を開催し、早めの対応を図るとともに、国交省の補助事業に対応するため、4月9日から申請書類作成会を開催するなど、国や都の補助申請へキメ細かな対応を図ってきました。
環境対策窓口での申請件数は、2005(平成17)年2月18日までに2,776件を受け付けました。
PM減少装置装着補助申請は05年2月1日現在、1,313社・5,317基の申請・交付が決定しています。内訳は、DPFが小型(車両総重量3.5~8トン)24基、大型(同8トン超)27基の計51基。酸化触媒が小型4,318基、大型948基の5,266基です。
低公害車導入補助の申し込みは05年2月1日現在、234社・937台です。内訳は、CNG車386台、ハイブリッド車166台、低PM認定車349台、新長期規制適合車36台。
東京都トラック協会は、2005(平成17)年10月からの新長期規制を前に、国や東京都など各方面に要望活動を展開しました。
東ト協では、自動車NOx・PM法の影響把握のため、05・06・07(平成17・18・19)年度の3年間の代替車両数を調査しました。それによると、代替車両(カッコ内はNOx・PM法対応代替数字)は、05年度では14,023(7,347)台、06年度では20,621(18,464)台、07年度で7,897(3,751)台の計42,541(29,562)台。代替資金は2,623億5,190万円(1,826億5,368万円)という試算が明らかになりました。東ト協では厳しい経営環境の中、こうした資金需要では経営危機が懸念されるとして、経営支援を要望したものです。
東京都は2005(平成17)年度予算で、大気汚染改善対策として、信用保証協会の保証対象とならない資力の弱い中小事業者を対象に、自動車NOx・PM法に伴う車両の買換えに対する「特別融資制度」を創設しました。
同制度創設に先立って東ト協では、新長期規制へ対応するための支援策を東京都等へ要望(15頁参照)しており、要望活動が実ったものといえます。こうした国の施策に対する支援策は、東京都としては前例が無く、画期的なものと評価できます。
この制度は、自動車NOx・PM法に伴う最新規制適合車等への買換えに対し、都が金融機関の融資(融資期間は5年)をあっせんし、金利の2分の1、信用保証料の3分の2を補助するものです。購入車両の所有権は留保されますが、第三者連帯保証人は不要となるものです。融資規模は05年度4,500台、06年度 3,500台の計 8,000台。予算額は05年度22億円(利子補給等は2011〈平成23〉年度まで実施され、06年度以降の負担額は30億円)。事業実施期間は、05・06年度の2年間です。
三井物産は2004(平成16)年11月22日、同社製DPF装置「CRT-TSS SOW-301B」が粒子状物質減少装置指定申請に際して、データ改ざんによる虚偽データを使用、基準に満たない製品を販売したと東京都に報告。また、三井物産の相原元八郎専務が11月24日に東京都トラック協会を訪れ、「ご迷惑をおかけした」と謝罪しました。
東ト協では、東京都に、三井物産製DPF装着車が環境確保条例違反車両とならないよう柔軟な対応を求めるとともに、04年12月20日に東京都議会自民党と対応策を協議しました。協議の席上、自民党側は「事業者にはこれ以上一切の負担をかけない」との姿勢を明確にしました。また、東京都はユーザー保護や物流・公共交通確保の観点から「三井物産製DPFの指定取消前に装着した車両については、当分の間、取消の効力は及ばないものとする」としました。
東ト協では、三井物産製DPF問題は「東京都と三井物産の問題が基本」との姿勢で事態の推移を見守るとともに、東京都に対して業界の要望を行い、さらに環境部に「対策室」を設けて、会員事業者からの相談等に応じました。
三井物産では04年12月1日に「DPF問題に関わる対応策」として、(1)代替品との無償交換(2)廃車または別途車両を手当てする予定ユーザーには、DPFを回収し、DPF購入代金相当額の返還(3)補助金の一括弁済──を発表しましたが、東ト協の要望で05年2月9日には「新車・中古車への買換支援策」を追加発表しました。その後、2月21、22日および3月3日に東ト協で、三井物産製DPFを装着した会員事業者に、補償内容の説明を行いました。
石原慎太郎東京都知事は、2004(平成16)年5月24日に開催された東京都トラック協会の通常総会懇親会で、「東京都の空がきれいになった」という、たくさんの都民の声が寄せられているとし、「トラック業界の皆さんの協力にお礼を言いたい」と、業界の努力を評価しました。
また、東京都が04年10月1日にまとめた「ディーゼル車規制開始後1年間の大気汚染状況(SPM)について(速報)」では、車両の排気ガスの影響を強く受ける道路沿道でのSPM(浮遊粒子状物質)の改善が著しく、住宅地等の環境に近づいていると、規制効果を評価しています。
さらに、2005(平成17)年2月21日に発表した「ディーゼル車走行規制による大気汚染改善効果について(04〈平成16〉年調査結果)」でも、大気汚染改善が着実に進んでいることが確認できたと評価しています。
東京都トラック協会は、交通事故防止を環境問題と同様に、業界の重要課題として、様々な活動を行っています。事故防止活動には、会員事業者独自の取り組みや、行政・地域住民等と一体となった取り組みなど、様々なスタイルがあります。例えば、運転者講習等や、横断歩道における交通誘導などの安全活動で、自社の安全性を高めるとともに、支部独自の事故防止大会を開催して意識の高揚を図ったり、各種交通安全運動、自治体・地域一体となった小学校での安全教室の開催などです。東ト協本部・各支部は、いずれの取り組みにも、中心的な役割を果たしています。
東ト協は1997(平成9)年から、全事業者参加型の事故防止大会を年初(2月)に開催してきています。毎回1,000人以上の事業者が参加する、全事業者参加型のこうした大きな事故防止大会を、継続的に実施しているのは全国的にも例を見ないといわれています。
9回目となる2005(平成17)年2月17日の大会には、1,100人以上が参加して行われました。事故を減少させることが業界の信頼やイメージアップにつながり、トラック運送業界が「社会との共生」を図る重要な接点として、毎年事業者・業界が事故防止への決意を示すものです。
事故防止大会での大きな特徴は、東ト協事故防止モデル支部の活動報告です。事故防止モデル支部は、事故防止大会実施と同時にスタートしたものです。東ト協が事故防止モデル支部を指定(指定期間2年間)し、それぞれの支部が地域に密着した独自のアイデアで展開した活動を、各支部・各会員事業者が〝その報告(材料)を参考にしたり調理したり〟して、事故防止活動の厚みを高めようというものです。
セーフティドライバー・コンテストは、警視庁交通部が主催し、東京都トラック協会等が協力して実施されているもので、会員事業者の運転者がチームを編成して参加し、チーム全体の無事故・無違反を競うものです。この無事故・無違反は、就業中・私用中の何れにも適用されるもので、いわば24時間の無事故・無違反を競うものです。
このコンテストは例年、10月1日から翌年3月31日までの半年間を競技期間として実施され、東ト協からは2004(平成16)年度では436事業者から1,388チーム・6,940人(1チーム5人編成)が参加しています。ちなみに、2003(平成15)年度の結果は、441事業者から1,259チーム・6,295人が参加。無事故・無違反を657チームが達成し、無事故・無違反を達成した運転者は5,484人です。
東京都トラック協会は、各事業者に営業用貨物車の事故情報を提供、点呼時の注意や事故防止活動の参考としています。
東ト協の機関紙『東京都トラック時報』に「営業用トラック関与の交通事故の特徴」を毎月掲載(原則10日号)、事故情報や事故原因・発生場所等の情報を提供し、注意事項を示しています。
東京都トラック協会の中西英一郎会長は、2004(平成16)年5月24日の通常総会で再選され、運賃問題への取り組みが重要と指摘しました。
新執行部体制を整えた中西新執行部は6月7日に記者会見し、その中で中西会長は、中小企業が大半のトラック運送業界では「適正運賃収受が必要」と強調。「日ごろ、トラック業界の役割を評価すると言っていながら、仕事の発注ではそうした発言を忘れたかのように厳しい」という実情が、あちらこちらで聞かれるとし、荷主側にも認識を改めてもらう必要があるとしています。また、改正下請法や独占禁止法の特殊指定の活用にも言及しています。
その後も中西会長は、理事会等会議の場でも運賃問題を取り上げ、2005(平成17)年の年頭所感でも「再生産可能な運賃・料金確保のための運動を荷主に対して行っていく」と表明。1月13日の新年理事会でも「運賃問題は大きな課題」と指摘し、(法制上の規制があるが)協会としてできることを行う体制にしていきたい、としています。
東京都トラック協会は、厳しい経営環境の中で荷主企業等からの運賃・料金引き下げ要請は依然として続いているため、2004(平成16)年12月2日に約330荷主団体に「適正な運送取引き」を求めました。
東ト協では、2000(平成12)年12月にも同様の要望を行っています。
今回の要望は、業界の厳しい経営環境の中、荷主企業からの一方的な運賃の値下げ要請、付帯サービスの強要などが依然としてみられ、輸送サービス対価の運賃・料金が厳しい現状では、輸送の安全確保、環境対策、交通安全対策など、社会からの要請に応えていくことに影響を与えるためです。
会員事業者へのアンケート調査では、荷主企業から「運賃の一方的な値下げ要請」「付帯サービスや商品の購入等の強要」「協力金の要請」──など、厳しい実情が示されています。このため、荷主企業に〝運賃・料金は厳しい状況にある〟として理解を求めたものです。
首都高速道路公団は、高額(100回)回数券が偽造されていることを理由に、廃止する旨を打ち出しました。これに対して東京都トラック協会は、東京都トラック運送事業協同組合連合会とともに、2004(平成16)年8月19日、首都高速道路公団に「首都高速道路高額回数券廃止の見直しについて」を要望しました。
首都高速道路の多頻度利用者であるトラック業界にとって実質的な値上げであり、同公団の示している廃止後の措置は、利用条件が十分整っていない、というのがその理由で、利用者の立場に立った見直しを求めました。
東京都トラック協会は、あざみ野研修健康センターを売却する一方、2004(平成16)年度の新たな福利厚生対策事業として、東京ディズニーランド/東京ディズニーシーと特別団体契約を結びました。
あざみ野研修健康センターは、利用者の漸減傾向を受けて廃止論がくすぶり続けていたため、東ト協は2003(平成15)年1月21日に「あざみ野研修健康センター経営小委員会」を設置、施設の今後のあり方を検討してきました。その結果、03年末での廃止が決まったものです。
あざみ野研修健康センターは、一般競争入札による売却処分となり、04年9月17日に西武建設㈱が落札しました(落札価格2億3,100万円)。
東ト協労務厚生委員会に「東ト協福利厚生事業検討小委員会」を設置、新たな福利厚生事業の検討を進めてきた結果、会員事業者のニーズが高い東京ディズニーランド/東京ディズニーシーと特別団体契約を結び、団体契約による通年割引、特定日の団体扱いによるイベント、特別団体利用券配布などの事業を推進しています。
東京都トラック協会は、トラック運送事業について正しい理解を深め、業界イメージアップを図るため、一般メディアを活用する等、業界外に積極的なPR活動を展開しています。東ト協はじめトラック業界の露出度を高めることで、社会的認知度や親近感の醸成を高めようというものです。
トラック、特に大型トラックについては、ある種(危ない、排ガスなど)の先入観が一人歩きしているようです。営業用トラックについての印象を一人ひとりに聞いてみると、例えば、知らない土地などでは営業用トラックの後について行くと安全という話、安全運転をしているので追随しても安心、排気ガスがきれい──などの声が聞かれますが、これがいつも〝私的〟な面での話ということになり、全体的なイメージ問題をどのように克服していくかが難問のようです。
東京都トラック協会は2005(平成17)年1月から、東京MXテレビで毎週金曜日に放送される「石原都知事定例会見中継」と毎週2回日曜日放送の「石原都知事会見ダイジェスト」の2番組を提供。番組の前後に「提供クレジット」、番組最後もしくは途中に「30秒CM」を放送しています。
また、ラジオでは、TBSラジオで毎週末の「交通情報」を提供、20秒CMを放送しています。放送内容は、(1)暮らしを守るトラックの「役割編」(2)環境対策を進める緑ナンバートラックの「環境編」(3)プロトラックドライバーとして模範となる運転を心がけている「安全編」──の3パターンです。
東京都トラック協会は、2004(平成16)年10月23日に発生した新潟県中越地震に対応するため、2日後の25日、東ト協本部に中西英一郎会長を本部長とする緊急輸送対策本部を設置、東京都からの要請に応え、救援物資を緊急輸送しました。
また、東ト協各支部も24日から、区や市の要請に応え、救援物資の緊急輸送を実施しました。
11月1日夕までに、東ト協本部および13支部から、2トン車51台、3トン車6台、4トン車37台、大型車4台の合計98台、協会指導車1台が出動しました。