全国貨物自動車運送適正化事業実施機関である全日本トラック協会は2004年12月17日、2004年度の安全性優良事業所として、12月16日に2,632事業所を認定したと発表しました。荷主や利用者が安全性の高い事業者を選びやすくするため、2003年度から導入された制度で、2003年度認定の2,000事業所とあわせて計4,632事業所が安全性優良事業所となりました。2年度目となった2004年度は、3,001事業所の申請を受理し、取り下げを除いた2,903事業所を書類審査しました。書類審査事業所に対する合格率は90.7%となっています。
安全性評価では、事業者の安全性を(1)法令の順守状況(2)事故・違反の状況(3)安全性に対する取り組みの積極性──の3つの視点で評価して合計80点以上の事業所を認定しており、社会保険への加入も認定の要件とされています。
また、日本経団連では2003年10月21日に策定した「安全運送に関する荷主としての行動指針」の一項目として、「運送事業者の選定にあたっては、ISO9001基準や安全性優良事業所認定制度などの客観的な基準を積極的に活用する」と定めて、産業界全般に浸透するよう努めています。
さらに、国土交通省の違反点数制度でも、通常なら3年経たないと点数が消去されないところ、安全性優良事業所認定を受けている事業所については、2年間無事故無違反なら違反点数が消去されることになりました。
安全性優良事業所は、全ト協ホームページ(http://www.jta.or.jp/)で社名・事業所名が公表されています。
国土交通省はトラック運送事業の違反点数制度を見直し、2004年8月1日から実施しました。これまで累積点数50点超で発動していた事業停止処分を、1回の処分で27点以上の点数を受けた場合へと基準を見直したほか、1運輸局管内の累積点数が50点を超えた場合には、その運輸局管内にある全営業所を事業停止処分にすることにしました。
新制度で事業停止処分の対象となるのは、1回の処分で27点以上の違反を行った営業所となりましたが、その事業者の1運輸局管内での累積点数が30点を超えている場合には、18点以上の処分で事業停止処分が下されます。18点という処分は、飲酒運転で死亡事故を起こしたり、ひき逃げ死亡事故を起こした場合などが該当します。
また、全国での累積点数80点超で発動されていた許可取消処分については、処分を受けた運輸局に関係なく2年間に事業停止処分を4回受けた場合、あるいは同一運輸局内の累積点数が80点超となった場合に改め、全国に営業所を持つ大手事業者にも配慮しました。
三菱ふそうトラック・バスは2004年3月24日、大型トラックのタイヤと車軸をつなぐための部品である前輪ハブの強度が不足しているため、最悪の場合破断して車輪が脱落するおそれがあるとして、国土交通省に計約11万台(登録ベース)のリコールを届け出ました。2002年1月に横浜市瀬谷区で起きた同社製大型トラクタのタイヤ脱輪死亡事故の後、同社は「整備不良が原因」との説明を繰り返してきましたが、一転して設計上の欠陥があったことを認め、リコール届け出に至ったものです。
これを受けて全日本トラック協会は「今になって『整備不良ではなくリコールでした』といわれても、戸惑いと憤りを感じる」とするコメントを発表し、再発防止の徹底を強く求めました。神奈川県警は5月6日に三菱ふそう関係者らを逮捕し、国土交通省も三菱自動車工業を刑事告発するとともに、警告書を交付しました。
さらに、その後もクラッチハウジングなど重要部位での欠陥隠しが次々と明らかになり、6月14日には三菱ふそうが47案件、計45万台にも上る欠陥が見つかったことを発表、大きな社会問題となりました。翌6月15日には、同社首脳が全ト協を訪れて初めて謝罪しました。
47案件のリコール等届出は、2004年10月27日に完了しましたが、年明けの2005年2月2日、過去にさかのぼって抽出された不具合について調査した結果、新たに41件の欠陥があることがわかり、順次リコールなどを届け出ることになりました。
三菱ふそうおよび三菱自動車のリコール関係不祥事を重く受け止めた国土交通省は2004年6月8日、リコール関連の不正行為再発防止対策をまとめました。自動車メーカーによる不具合の隠ぺいや虚偽報告、データ改ざんなどの不正行為を排除し、リコールの迅速、確実な実施を図るため、国の情報収集体制、監査体制、技術的検証体制を強化するものです。
情報収集では、メーカーから四半期ごとの定期報告を義務づけるほか、警察など関係機関との定期的情報交換やユーザー情報収集の充実などを図り、疑義のあるメーカーに対しては、集中監査や各種データの総合的分析による重点監査を実施するなど、メーカーに対する監査体制を強化します。
技術的検証では、疑義のある案件について、交通安全環境研究所等における現車確認や試験を実施するほか、死亡事故や車両火災などの重大事故につながる恐れのある案件については、専門家による実証的、統一的な検討を行い、不具合が設計や製造に起因するものかどうか判断が難しい案件について検討する体制を整えることになりました。
国土交通省は2004年12月15日、大型車のホイール・ボルト折損による車輪脱落事故の再発防止対策をまとめ、大型車の使用者、自動車整備事業者、自動車メーカー等に指示しました。
同省が設置した調査検討会が取りまとめた報告に基づくもので、点検・整備時の具体的な注意事項を指示したものです。各地で頻発した大型車の車輪脱落事故を防止するため、日常点検時に点検ハンマなどを使用してホイール・ナットの折損やホイール・ボルトの緩みなどがないか点検するよう改めて求めたほか、定期点検整備時には、ホイール・ナットが規定のトルクで締め付けられていることを、トルク・レンチを使用して確認するよう注意を呼びかけました。
運転中の携帯電話使用への罰則適用や中型運転免許の創設などを盛り込んだ改正道路交通法が、2004年6月3日に国会で成立し、一部が11月1日から施行されました。11月に施行されたのは、携帯電話使用への罰則適用と飲酒検知拒否に対する罰則強化などで、11月1日から3日までの3日間、全国主要道路約6,800か所で行われた一斉取り締まりでは、携帯電話使用については6,021件、飲酒の検知拒否は3件が検挙されました。
運転中の携帯電話使用は、これまでも道交法で禁止されていましたが、罰則の対象となるのは、これにより事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合に限定されていました。今回の改正では、運転中に手で持って通話したり、メールの送受信をしただけでも罰則(5万円以下の罰金)の対象となります。違反点数は1点、反則金の額は大型車で7,000円、普通車で6,000円とされました。
免許制度の改正では、普通免許と大型免許の間に、中型免許を設けることになりました。各免許で運転できる自動車の範囲は、普通免許が総重量5トンまで、中型免許が5~11トン、新大型免許が11トン超となる予定。現行の普通免許保有者は、無条件で総重量8トンまで運転できる「限定中型免許」に移行することになります。免許制度の施行日は公布後3年以内とされており、2007年度からの実施となる見通しです。
このほか今回の改正では、駐車違反の責任を車両の所有者(車検証上の使用者)にも追求できることになりました。駐車違反を犯した運転者が1か月経っても反則金を納めない場合などに、車両の所有者に対しても違反金の納付を命じることができるようにしたものです。また、放置駐車の確認と標章の取り付け業務を民間委託できるようにしました。駐車違反関係は、公布から2年以内に施行されることになっています。