政府は2004年3月27日、普通運転免許と大型運転免許の間に中型免許を創設することなどを盛り込んだ道路交通法改正案を閣議決定し、国会に提出しました。現在は車両総重量8トンを境にして普通免許と大型免許に分けていますが、新たに総重量5トン以上11トン未満(乗車定員11人以上30人未満)を運転範囲とする中型免許を設けるというもので、トラック車両の大型化による、内輪差や制動距離等に関する技能・知識不足に起因する事故を抑止することが目的です。中型免許と新大型免許については、新たに路上試験と講習を導入するとともに、指定自動車教習所での教習および技能検定制度を導入する予定です。
一方、現行2トン積み車の約36%が架装などにより車両総重量が5トンを超えており、新普通免許で運転できなくなることが判明しました。全日本トラック協会では2トン積み車を引き続き普通免許で運転可能とするため中型免許の下限を5トン以上とするよう要望してきた経緯もあり、2003年1月26日に警察庁に提出した要望書では異例の「お詫び」をするとともに配慮を求める一幕もありました。改正案では、中型の下限は5トンのまま変更されませんでしたが、当初警察庁が講習の受講など何らかの条件を付けることに含みを持たせていた、現行普通免許保有者が車両総重量8トンまで運転できる「既得権」については、実質無条件で改正後も認めることになりました。なお、新制度への移行は、教習所の準備期間なども考慮して、3年後の2007年から実施される予定となっています。
警察庁が2004年3月に国会に提出した道路交通法改正案では、違法駐車の責任を車両の所有者(車検証上の使用者、営業用トラックの場合は運送会社)にも追求できるようにする制度改正が盛り込まれました。現行制度では、運転者の刑事責任を追及することとされていますが、違法駐車の場合、現場に運転者がいないことが多く、違反運転者の特定が困難なことから取り締まりの実効が上がらないという問題があるため、運転者が反則金を納付せずその責任を追及することができない場合に、車両の所有者に行政的な制裁として、違反金の納付を命じることができるようにします。違反金を滞納した場合には、継続車検を受けられない仕組みとし、車両の所有者が一定回数以上繰り返して違反金納付命令を受けた場合は、車両の使用制限命令を行うことができるようにします。
このほか、違法駐車の取り締まり事務を公安委員会が指定する民間の法人に委託できるようにします。限りある警察力を、より悪質・重大な警察事象に振り向けるべきとの指摘に応えたものです。
トラック運送事業などのサービス業を新たに規制対象に加えた改正下請代金支払遅延等防止法(改正下請法)が2003年6月12日の衆院本会議で可決、成立し、2004年4月1日から施行されます。下請法は、大手製造業の下請けいじめを防止するため1956年に制定された法律で、制定以来47年間にわたり規制対象は変更されていませんでしたが、近年の経済のソフト化、サービス化、IT化、規制緩和の進展等に伴い、サービス業全般に対象を拡大することにしたものです。親事業者に対して取引内容の書面化とその保存を義務づけるほか、下請けに対する代金の支払遅延や減額、買い叩きなどの行為を禁じています。
公正取引委員会が2004年2月4日に発表した運送取引に関する調査結果によると、24.1%のトラック運送事業者が「著しく低い代金での取引の要請がある」と答え、25.6%の事業者が「一方的に代金を決定されたことがある」と回答しており、下請法の適用で元請けと下請け事業者間の取引内容の明確化が図られると期待されていますが、元請け事業者にとっては新たなコストアップにつながると見込まれています。
改正下請法では、元請け-下請け間取引という、同業者間取引が規制対象となりますが、トラック運送業界などが「真荷主と元請けとの間で取引が適正化されなければ問題の根本的解決にはつながらない」などと主張していたこともあり、公正取引委員会は2004年4月1日の改正下請法施行にあわせて、真荷主が物流を委託する際の不公正な取引方法を独占禁止法に基づき特殊指定しました。運賃・料金の支払遅延、減額、買い叩きや物品・サービスの強制購入など、下請法で親事業者に禁じている行為をほぼそのまま荷主の禁止行為として定めたもので、荷主の優越的地位濫用に対する抑止力になると期待されています。
独禁法では、業種を問わず禁止行為を定めた一般指定と優越的地位濫用行為が起こりやすい分野に対する特殊指定があり、これまでに百貨店、教科書、海運、食品缶詰など6業種が特殊指定されています。2004年2月13日に行われた公聴会ではトラック、内航海運など物流関係業界団体の代表らが意見を述べ、このうち全日本トラック協会は、特殊指定案に賛意を示しながらも、買い叩きの基準となる運賃額について「荷主が力ずくで定めた運賃が基準とされたのでは何の意味もない。はっきりとした基準を示してほしい」などと効果的な運用を求めました。
環境省は2003年2月12日、引越時に発生する廃棄物の取り扱いマニュアルを定めました。引越を請け負った業者が廃棄物の処理まで併せて請け負い、転々と丸投げが行われるなかで、結果的に不法投棄に至る事案が発生したことを受けて、廃棄物処理法上の解釈を明確化したものです。マニュアルでは、家庭の引越廃棄物処理について、引越請負業者が一般廃棄物処理業の許可を有していない場合には、原則として引越廃棄物を引き取って運搬や処分をすることはできないと明記する一方で、引越利用者が引越請負業者に許可業者への引き渡しを書面で委任している場合には、引越廃棄物の運搬を認める特例措置を設けました。
事務所の引越廃棄物については、排出する事務所の責任で処理することが原則とし、処理責任を運送業者などの請負業者に負わせてはならないとし、特例は認めませんでした。このほか、運送業者などが用いる梱包用資材などについては、運送業者などが排出する廃棄物として処理することが原則としています。